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BAND-MAID:解き放たれたフリアエたち 。『Unseen World』レビュー
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ギリシャ神話の復讐の女神フリアエたちは、容赦のない厳しさを見せたが、地上の罪人を追う正義の存在でもあった。自然の摂理に対する罪、または神々に対する罪を犯した人間たちに罰を与えていたのだ。彼女らは大地母神と天空神の間に生まれた娘たちで、その目からは血の涙が流れた。
フリアエたちは、情け容赦なく正義を追求した。全てを圧倒する嵐雲の姿をとったり、しつこい昆虫の群れの姿をとったりした。世界から罪が消えない限り、フリアエたちを負かすことはできなかった。
フリアエは少なくとも3柱いた。ティシフォネは、殺人者に罰を与えた。アレクトは、紛争や狂気の種をまいて道徳上の罪を犯した者に罰を与えた。「嫉妬深い」メガイラは、配偶者や恋人への約束を破ったり不貞行為をした者に罰を与えた。
さらにフリアエたちは、BAND-MAIDの楽曲でしばしば表現される苦悩の感情をよく知っていることだろう。またフリアエたちなら、歌の語り手による執拗な答唱も良しとするだろう。BAND-MAIDはしばしば、不貞な恋人、または優柔不断な恋人に向けた楽曲を歌う。しかし『 Unseen World』の収録曲で歌の語り手を失望させた人物は、軽蔑に激怒した恋人の憤激をすぐにでも浴びることになる。
不思議なことに決してアルバムでリリースされることがなかったシングルの「Choose Me」のような定番曲では、歌の語り手は明らかに、歌われる恋人にもう1回チャンスを与えるつもりでいるが、その与え方は全て自分で決めるつもりだ。「This will be the last one(これが最後のチャンス)」、「let’s carry on(続けよう)、もっと深く」「戸惑うならもうdisappear(消える)」。荒々しいボーカルの彩姫が扮する人物は、許すことはあっても、決して忘れない姿勢だ。
『Unseen World』でも、名こそ明かされていないが、恋人の同様の非難が幾度となく歌われる。焼け付くような「H-G-K」では、彩姫は「I’ll cross my fingers(私は指を十字架にして祈る)/ go to hell(君が地獄に落ちるように)」、それに「Almost isn’t enough(ほとんどでは足りない)」と歌う。しかしこの歌の語り手は、こうした非難も正当化されると結論づける。
ああ生命が爆(は)ぜるんだ。
もうどうかしてる位でいい
Ah, life is exploding.
It’s okay if I’m doing something wrong
「本懐」という楽曲では、彩姫が傲慢にも「You will forget about me someday(君はいつか私のことを忘れる)」との言葉で訓戒する際、音楽が急な休符によって中断される。この瞬間の、この冷徹な捉え方には、BAND-MAIDの恋愛に関する哲学が集約されているのかもしれない。
これまでのBAND-MAIDの歩みは、「スリップノットの歴史の高速巻き戻し」のようだと形容できる。BAND-MAIDは、スリップノットが20年かけてリリースしてきた量の音楽を7年でリリースした。そしてスリップノットは時が経つにつれて次第に柔らかくより旋律的に変化していったが、BAND-MAIDは加速度的に無秩序かつ予期不能な度合いを増してきた。2019年のスリップノットのアルバム『We Are Not Your Kind』は、確かに素晴らしいアルバムだったが、キャッチーさを求めるあまり親しみやすすぎるようなリフ、サビ、そしてメロディーが多い。それに対して、BAND-MAIDは2014年の『MAID IN JAPAN』では無難なパワーポップバンドという感じであったが、それから進化して『Unseen World』にもつながる燃えるかのような残忍性を帯びるようになった。
『Unseen World』は、「Warning!」と題された曲のカーニバル風のイントロで始まる。これも、2019年のアルバム『Conqueror』の冒頭を飾って驚きを集めた「PAGE」のゴージャスなバラードと比較すればかなり短いものの、同様に見せかけに過ぎない。15秒ほど弦楽器のピッチカートで不気味なサーカス音楽が奏でられた後、「Warning!」は骨さえ砕かれるようなギターリフに突入し、そのBPMは何億万にも達するのではないかという勢いだ。その後、『Unseen World』では容赦ないハードロックの猛攻撃が続く。
ギタリストの歌波は、BAND-MAIDのソングライティングを主に担当し、また怪物級のリフも披露してくれる。歌波は特に、説得力のあるギターフックを書くことに、天才的に長けている。しかし歌波は、簡単な解決に落ち着くことが決してない。 ロック音楽を含む西洋音楽には、必然的な和声的解決に向けて、出来るだけスマートに主音に戻って曲を閉じたいという、逆らいがたい欲望が通知している。ディープ・パープルの「Smoke On The Water」の冒頭のリフについて考えてみてほしい。この4つの音符からなる短調のリフでは、減5が使われているため、緊張感が生まれる。しかしその緊張感は、一切の躊躇なく、素早く解決される。歌波であれば、音階の第2音と第5音を加えて、主音への道のりに複雑さを、そして面白さを少し加えるのではないかと、簡単に想像できる。
「Warning!」冒頭の魂を押しつぶすようなリフは、歌波が同様の驚きの要素をいかに作り出すのかを教えてくれる好例だ。この4つの部分からなるリフの最後のフレーズは、予期せぬ方向に向かっていくつか余分な音符を経由して、やっと期待される結びに到達する。「Manners」と「本懐」の冒頭のリフも、同様に4つの部分からなり、アプローチも似ている。このような小技は、多様な音の世界を作り出すにあたって、重要な要素となる。
しかし、『Unseen World』の楽曲が聴き手の喉元を掴んで畏敬の念を持って聴くように迫るのは、上記以上に重要な構造的要素があるからだ。楽曲の構造はフランク・ロイド・ライトがペンシルベニア州ミル・ランに建てた見事な「落水荘」と同じくらい革新的で、驚きに満ちている。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、リフレイン、Cメロ、インタールードの語り、バックグラウンドの「whoa-oh-oh」、ギターソロ、そしてランダムな器楽の間奏が織りなす衝撃的なタペストリーを目の当たりにすると、畏敬の念を禁じ得ない。聴き手は、次に何が来るのか一切わからなくなるのだ。
作曲家が次に聴き手をどの方向に連れて行くのか、聴き手にはわからない状態にしておくということこそ、エリック・サティからアントン・ブルックナー、それにパウル・ヒンデミットからBAND-MAIDまで、偉大な音楽作品において重要な理想となってきている。そしてもちろん、この理想を追う姿勢はロック音楽にも見られる。『Unseen World』の最後を飾る楽曲「Black Hole」での彩姫の「This is due to what is called a black hole, you know?(これはブラックホールと呼ばれるものの仕業だ、わかるよね?」との語りの次に、一体何が来るのかわかるだろうか。私はこの曲を何度も聴いたが、それでもまだわからない。これこそ、「Black Hole」、そしてBAND-MAIDが偉大である所以なのだ。
しかし、ノーベル賞を受賞したボブ・ディランが50年以上前に証明した通り、ロック音楽の醍醐味は音楽だけではない。BAND-MAIDの小鳩ミクは、今日ロック音楽界で最も才能豊かな作詞家だ。 正直なところ、多くのロック音楽の歌詞、それに現在のポップ音楽の歌詞のほとんどは、陳腐かつ平凡な表現をこねくり回しただけだ。
しかし、ミクは現代世界のより人目につかずより曖昧な部分での気づきを題材として引き出してくる。その点彼女は、ザ・ストロークスのジュリアン・カサブランカスに少し似ている。しかし、ザ・ストロークスによる21世紀の人生や恋愛の課題に対する回答は困惑や倦怠というものだったが、ミクは葛藤と怒りをもって反撃してくる。彼女は自分の問いに答えが提示されることを要求してくるのだ。
『Unseen World』でも、ミクは引き続き、愛にまつわる葛藤、そしてフリアエたちと同じく不貞な恋人や相手をがっかりさせる恋人に裁きを求める姿勢を題材にしている。ミクが「After Life」で彩姫の最後のサビのところで「Don’t you say you love me!(私を愛しているなんて言わないで!)」と叫ぶとき、聞こえてくるのは恋愛につきものの終わりなき「メリーゴーランド」、「目眩」、そして「waste of time(時間の無駄)」に嫌気がさした女性の葛藤の声だ。ミクは曲の中で、こうしたもののイメージを想起させる。ミクが語る「どんな理想も 吐き出す冗談だ」よりも絶望的な感情などあるだろうか。
ミクがいかに、人間の欠点を鋭く徹底的に観察できているかが、常に伝わってくる。それは、「No God」の次のような箇所からも明らかだ。
愛し続けてる 夢の先まで
I keep loving you to the end of my dreams
愛は万人に、信頼少数に
Love is for everyone; trust is for a few.
愛が真の意味で花開くのは夢の中だけなのだろうか。恋愛の文脈では、信頼というものは事実上不可能なのだろうか。『Unseen World』を貫く悲観主義には極めて重みがあり、魂が押しつぶされそうだ。
それでいて、ミクの歌詞には圧倒的な快楽の瞬間も愛の痛みを消し去るのに十分なほど含まれている。例えば、「I Still Seek Revenge(私はまだ復讐を望む)」(これはBAND-MAIDの曲の名前の付け方の典型例と言えるかもしれない)では、彩姫は次のように歌う。
心蝕んだ快楽に溺れては
ああ 嫌気がさす
Drowning in heart-rending pleasures
I feel ill…
つまり、2008年に「All Hope Is Gone(全ての希望は消え去った)」と結論づけたスリップノットとは異なり、BAND-MAIDは希望の余地を残しているのだ。
では、『Unseen World』には柔らかな要素が一切ないのかというと、そうではない。このアルバムの真に穏やかなわずかな瞬間のうちの1つは、「H-G-K」の2回目のサビに続くCメロだ。ビートのテンポが下がり、愛らしい旋律が登場する。しかしこの表面上は情深い瞬間に、彩姫は何と歌っているのだろうか。
嘘の気持ち飲み込んで
本当の気持ちに釘を刺した
ねえ 本当にそれでいいの?って
無垢な凶器で見つめないでよ
Swallow the feelings of lies
I stabbed a nail in my true feelings
Hey, is that really okay? What?
Don’t stare at me with an innocent weapon…
つまり、一瞬温かい雰囲気に包まれるように思われても、そこには脅しが通底しているのだ。
楽曲「Giovanni」は、彩姫の定番となっている歌い方が百科事典のように集結している。彼女はAメロ1番を唾を吐き出すように歌う。リフレインでは、「I’m afraid you know you can’t hold me(悪いけれど私を抱くことはできないって知っているでしょ)/ Time never goes backwards(時間は決して逆戻りしない)」と歌う彼女の歌い方に、怒りがはっきりと見て取れる。それでも、Bメロで「So what is right?(それなら何が正しいの)」と歌う彼女の歌声は穏やかになり、蔑む相手に落ち着いて「keep yourself alive-live-live-live(ずっと生きて-生きて-生きて-生きて)」と忠告する。もちろん、この落ち着いたムードは長続きしない。Cメロの最後で「There’s nothing I can do to help you(あなたのために私にできることは何もない)」と歌う彼女の声からは、軽蔑がしたたり落ちるのが聞こえるかのようだ。
楽曲「Why Why Why」は、とりあえずという感じのミサのベースと、茜がドラムを叩く音で始まる。そして彩姫が、軽いインフルエンザにかかっているかのように咳をしながら登場する。ミクは10秒にもわたって1オクターブ上で「Yeeeeaaaaahhhhh!」と叫んで喉の調子を整える。そして始まる歌詞は、ほぼ大部分が英語であり、何が起きているのかはほとんどわからない。彩姫が「Maybe you’re right(あなたが正しいのかもしれない)」、「Tell me why(なぜかを教えて)」、「The world is changing(世界は変わっている)/ Nobody’s fault(誰のせいでもない)/ So somebody is crying(だから誰かが泣いている)/ Somebody is laughing(誰かが笑っている)」などのフレーズを歌うのが聞こえる。音楽は狂乱し、まさに大混乱の様相だ。この曲の意味するところを理解するにあたっては、日本語で歌われる歌詞の一部が鍵になるかもしれない。
善も悪になって笑ってる
悪が善に変わる時代
Good becomes evil and laughs
A time when evil turns into good
作詞したミクは、現代世界の混乱を題材にしているのかもしれない。そのような切り口であれば、「Why Why Why」の混沌とした音楽もぴったりだ。Cメロに続く歌波のギターソロは、ソロというよりは、確固たる足場を探すかのような曲想だ。「Why Why Why」は、またミクの長くも狂気の様相を見せる「Yeeeeeaaaaahhhhh!」の叫びという最高潮の瞬間を再度迎えて終わる。
ボーカルという点でも、『Unseen World』にはとても嬉しい驚きがある。楽曲「サヨナキドリ」では、ミクがリードボーカルを歌うのだ。ミクがリードを歌うのをファンが耳にできる機会は、『World Domination』収録の「Rock In Me」という有名な例外を除くと少ない。彩姫であれば怒りに満ちた非難を声に乗せていたであろうところ、ミクは「サヨナキドリ」にある種の脆さを持ち込んでいる。これは、ジミー・ヘンドリクスの言葉を借りれば、葛藤に満ちた「愛の叫び」の1つと言える。しかし彩姫も、「サヨナキドリ」では出番があり、Cメロでは以下のように語りかける。
私は海のごとくどこまでも寛大で
どこまでも愛深い。あなたに与えればその分
私も与えられる。なぜなら私たちは無限の存在だから
My bounty is as boundless as the sea
My love as deep, the more I give to thee
The more I have, for both are infinite
彩姫はこの言葉を冷徹に、何の感情も込めずに口にする。それでも、この言葉には哀調とメランコリーのメッセージが込められている。「サヨナキドリ」は、ミクがリードボーカルを歌っていることから、このアルバムで真の意味でペースが変わる唯一の楽曲かもしれない。しかしこの作品で表現されている感情は、アルバムのその他全ての楽曲と同様に、悲しげで哀愁に満ちている。
例えば、ミサのベースは全体のミックスの中では囚人のように身動きが取れなくなってもおかしくなく、それは『Unseen World』収録曲のようにアグレッシブな楽曲ではなおさらだ。しかし、(Gacharic Spinの奇才F チョッパー KOGAと並んで)世界で最もファンキーなハードロック/メタルのベーシストであるミサは、どこまでもクリエイティブだ。ミサにはいくつもの見せ場がある。「No God」でのミクの「Get down!」に続く器楽間奏でのミサのソロは、間違いなく大きな見せ場だ。しかし、注意深く聴いてみると、これと同じくらい目を見張る隠れた見せ場に気づかされる。例えば、「本懐」のCメロや「Black Hole」のAメロ1番で披露する、親指を他の指と同時に用いたオクターブのスラップ奏法などが挙げられる。
ドラマーの廣瀬茜は、どの楽曲でも思いつく限りの大騒乱を披露してくれる。「After Life」には、彼女の代名詞的なトリックがたくさん登場する。例えば、より深刻な曲想になる瞬間への移行を印象付けるために、その前のタイミングで少し調子を弱めるなどだ。彼女は、「Manners」に見られるように、絶妙なロールでムードに変化をつけている。楽曲は確かに4分の4拍子だ。しかし歌波は、ロック音楽ファンをしてそうではないと思わしめる、不気味なほどの能力を持ち合わせている。ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテットの「Blue Rondo A La Turk」を聴いているのではないかと思わせてくれるのだ。
しかし器楽伴奏に関して最も重要な変化は、歌波によるリードギターの演奏に見られる。歌波は世界を混沌としたものとして捉える見方を受け入れたようだ。彼女のソロには、もはや明確な構造はない。そうではなく、「I Still Seek Revenge」にあるように、彼女のソロはどこからともなく始まるのだ。このアプローチの変化は、現代世界に冷徹な眼差しを向ける『Unseen World』の全体の雰囲気作りに貢献している。
『Unseen World』に関して批判すべきところがあるとすれば、『Conqueror』の「Liberal」、「Dilemma」、「Blooming」、もしくは「輪廻」のように直ちに魅力がわかる楽曲が、このアルバムには一切収録されていないことが挙げられるだろう。上記の楽曲は確かに、『Unseen World』のどの楽曲より取っ付きやすい。しかし、『Conqueror』は『Unseen World』よりも一貫性に乏しいことも確かで、特に一貫性を欠くのはすでにリリースされていたラジオ向けのシングルの「Glory」、「Bubble」、それに「Endless Story」だ。その結果、『Conqueror』はスタイルが多様すぎて、聴いていると『Unseen World』よりバラバラに感じてしまう。『Unseen World』は一貫して怒り全開で容赦がない。
『Unseen World』を貫くムードが途切れる瞬間があるとすれば、それは「Manners」や「Chemical Reaction」などの楽曲に見られる。これらの2曲では、強烈な熱狂の代わりにより根本的に残忍なリズムを聴くことができる。テンポは他の楽曲よりゆっくりだが、力強さと残忍性は一切衰えていない。『Unseen World』はフリアエたちの如き怒りをどこまでも貫いているのだ。
ギリシャ神話のフリアエたちに話を戻すと、フリアエたちが時折、まさに彩姫とミサがステージで着用する長いローブの喪服を身にまとっている姿、またはまさにミク、歌波、そして茜と同じ若い女性の狩人のミニスカートとブーツを着用している姿で描かれる点は興味深い。しかし、フリアエたちとBAND-MAIDの間には、服装の一致以上に共通している点が数多くある。フリアエたちとBAND-MAIDの間で最も重要な共通点は、どこまでも正義を求める姿勢、つまり、善は善、悪は悪と判断できる知性だ。この断固とした姿勢が、この確信が、『Unseen World』全体を貫いている。
もちろん、日本のロックバンドでは衣装もとても大切だ。この衣装の美的感覚は、日本人以外には理解できないわけではないにしても、理解が難しいものだ。衣装の点に関しては、BAND-MAIDは何の脅威も感じさせないどころか、歓迎ムードを漂わせている。彼女たちはファンを「ご主人様とお姫様」と呼ぶ。ミクは奇怪なことに鳩を自らのマスコットとしている。
しかし、こうした衣装の美的感覚とは完全に逆行するように、BAND-MAIDの作品は残忍で容赦がない。BAND-MAIDの「不可能なほどハードロッキング」な音楽的イディオムに、現代の世界や現代の恋愛に鋭く切り込むミクの歌詞が合わさることによって出来上がるのは、脅威を感じさせるわけではなくとも、少なくともこれまでの見方に再考を迫るような世界観だ。
日本には、現在ロック界で最高レベルのパフォーマンスを見せてくれるロックバンドが他にもある。Unlucky Morpheusはリリース毎に新境地を見せてくれる。LOVEBITESはどのリリースでも、一貫して圧倒的なほど、目を見張るものを聴かせてくれる。Mardelasの蛇石マリナは、彼女特有のビジョンを明確に確固たる姿勢で追求している。GLIM SPANKYの松尾レミは、天才的としか言いようがない。日本こそ世界のロック音楽の中心地であることに疑いはない。
しかし、BAND-MAIDは孤高の存在と言えるかもしれない。2017年のアルバム『Just Bring It』から2018年の『World Domination』、そして2019年の『Conqueror』から今回の『Unseen World』まで、驚嘆するような一人勝ち状態を続けている。そう、4年間に4枚のフルアルバムを出しているのだ。さらにシングルやEPは他にも出している。
しかしBAND-MAIDの驚嘆すべきキャリアの中で最も重要な側面とは、発表した楽曲の量ではなく、そのとてつもない質だ。シングルを出す毎に、EPを出す毎に、そしてアルバムを出す毎に、凄みのきいたものを聴かせてくれるのだ。 単に、多くの楽曲で描かれるろくでなしの恋人に凄みをきかせていると言いたいのではない。BAND-MAIDは、音楽、歌詞、器楽、ボーカルのどこを取っても、真に燃えるかのような勢いだ。今私たちは、巨匠とともに時代を生きている。もう一度言わせてもらおう。今私たちは、巨匠とともに時代を生きているのだ。For the English version of this article, please click on “English” at the top of the page.
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