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ALDIOUS 『EVOKE!! 2010-2020』レビュー

ALDIOUS 『EVOKE!! 2010-2020』レビュー - Raijin Rock
ALDIOUS 『EVOKE!! 2010-2020』レビュー
R!NがAldiousの新たなコンピレーションアルバム『EVOKE!! 2010-2020』で披露したパフォーマンスは歴史に残るだろう。

Aldiousが新たにリリースしたベストアルバム『EVOKE!! 2010-2020』の最後の曲が終わるや否や、再生機の「Re:fire(最初から再生)」ボタンを押して、またアルバム全体を聴きたくなるに違いない。その理由は簡単だ。新加入のボーカルR!Nが、過去最高のボーカルのパフォーマンスに並ぶ出来を披露しているからだ。RamiやRe:NOの陰に隠れる存在だった彼女は、完全に一人前となり、日本最高のロックシンガーの1人としての立ち位置を固めたと言える。

「1」

EVOKE!!』の収録曲は、第1弾のコンピレーションアルバム『EVOKE』より多様だ。それでも、最終曲のバラード「fragile」を除けば、どの曲もメタル、つまりエッジが効いて、テンポが速く、エキサイティングなものだ。R!Nは自信を持って、『EVOKE!!』のどの曲もパワフルかつ丁寧に歌っている。自身は様々な感情を伝えられる多彩なボーカルであると証明してみせたのだ。「STEP」で聴かせてくれる柔らかさから「Luft」で披露してくれるアグレッシブな歌声まで、R!Nは前任の2人とは異なる解釈判断をしている。

え、大胆にも、Ramiの最も愛されている曲である「Luft」をR!Nが歌ったのかって?そう、歌ったのだ。R!Nは、前任の2人の代名詞的楽曲であっても、遠慮する気配はない。R!Nは、「Luft」だけではなく、Re:NOのデビュー曲となりAldiousファンの中では特別な存在であり続けている「White Crow」にも果敢に挑戦しているのだ。R!Nは自分の歌い方をしっかり定めて、どちらの曲も心臓が止まるかと思うほどの説得力で歌い上げている。

最も注目を集めるトラックはもちろん、Rami時代の秘蔵作品的な「Confusion」だ。この曲は、2011年のシングル『Mermaid』とDVD『Determination Tour 2011 – Live at Shibuya O-East』でしかリリースされていない。このどちらかを所有していない限り、新曲を聴くかのように楽しめるだろう。というのも、Re:NO時代のAldiousはこの曲をライブで披露したことがないのだ。初期のAldiousの曲の多くと同じく、「Confusion」はカミソリの刃のようにエッジが効いている。R!Nが歌う「Confusion」は獰猛で怖いくらいである。今後ライブで聴きたい曲だ。

「2」

しかし、『EVOKE!!』でまさに飛び抜けた出来となっているのは、Re:NOが作曲した中で最も焼け付くような作品の2つである「Re:fire」と「Reincarnation」だ。 「Re:fire」ではR!Nは明瞭な歌い方をしているのだが、音節を短く歌うためにその特徴がより鋭くなっている。これによって、R!Nのバージョンの「Re:fire」は本当にエキサイティングなボーカルを楽しめる曲になっている。

Re:NOがAldiousに持ち込んだ貢献の中で、まだ十全な評価を受けるに至っていないのが、彼女の歌詞だ。彼女が書く歌詞には指摘な深みがあり、それは多くのロック音楽の歌詞と比べて、遠回しではあれどはるかに面白いのだ。「Reincarnation」は、音楽史上最も衝撃的である部類の歌詞(英語で歌われる)で始まる。

愛するあなたよ、私はあなたに殺された
このつまらぬ現世を、私の魂だけが彷徨っている。
今夜私は、自分のための身体を探す。…そしてあなたのための身体も。

この「殺された」というのは、辛い失恋のメタファーであることを願うわけだが、いずれにせよこの曲は不穏だ。R!Nが歌う「Reincarnation」からは、愛を求めつつフラれた(もしくは殺された)人間の怒りと呵責が明確に伝わってくる。最後の歌詞も英語で歌われるのだが、オープニングと同じくらい衝撃的なものだ。

あなたに殺されても、私は絶対にあなたを許す。
あなたに殺されたとしても、私はあなたを変わらず愛し続ける。
あなたに殺されても、私は絶対にあなたを許す。
あなたに殺されたとしても、私はあなたを変わらず愛し続ける。

Re:NOはこの歌詞を、霊妙かつ不気味なトーンで歌っていた。R!Nは、より挑戦的で怖い歌い方を選択している。R!Nは「死神」となって、自らを傷つけた人に取り憑くのだ。私を恐れなさい、と。これは、R!Nがいかにして『EVOKE!!』の収録曲を自分ならではの曲に仕上げたのか、その選択を如実に語ってくれる例だ。

「3」

EVOKE!!』の全体を通して、R!Nは、歌の語り手は何を伝えようとしているのだろうか、と考えずにはいられないような歌い方をしている。そして、日本語が少しでもわかるかどうかは関係がない。彼女の声のトーン、それに響きのわずかな変化から、R!N(もしくは語り手)が何かを感じているということが伝わってくる。混乱であれ、欲望であれ、怒りであれ。これこそ、真に素晴らしい歌い手の証である。

それに加えて、『EVOKE!!』はアルバムとしての一貫性も保っている。『EVOKE!!』の収録曲は、それぞれ論理的かつ合理的に並べられている。それも大部分はR!Nのおかげだ。有名な定番曲が並んでいるのに、R!Nによるスリル満点の再解釈によって、このアルバムは新作のように聞こえるのだ。

R!Nにとっても、世界にとっても、今必要なのはAldiousの新曲だ。仮にそのためにRe:NOに新曲の作曲を依頼することになったとしても。ボーカル面だけで判断すれば、R!NをRe:NOやRamiと比較検討する必要はもはや一切ない。R!Nはまさにロックという声の持ち主であるし、曲に込められた相反する感情にどうハイライトを当てるかという難しい判断もこなせる。彼女には、自分自身の感情を表現する力がある。R!Nは無二の存在だ。

 

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Song Time Time Album Original Year Music Lyrics
Original R!N Singer
1 Luft 5:42 5:38 Deep Exceed Rami 2010 Yoshi Rami
2 Re:fire 3:46 3:45 Radiant A Re:NO 2015 Re:NO, ShinYMG Re:NO
3 Believe Myself 5:12 5:11 Radiant A Re:NO 2015 Toki Re:NO
4 Reincarnation 5:09 5:10 Unlimited Diffusion Re:NO 2017 Toki Re:NO
5 愛しい男 4:28 4:29 We Are Re:NO 2017 Toki Re:NO
6 Confusion 3:13 3:15 Mermaid Rami 2011 Yoshi Rami
7 White Crow 4:31 4:32 White Crow Re:NO 2012 Yoshi Re:NO
8 STEP 4:06 4:05 Radiant A Re:NO 2015 Re:NO, ShinYMG Re:NO
9 fragile 5:07 5:06 Unlimited Diffusion Re:NO 2017 Re:NO, ShinYMG Re:NO
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