Now reading

CYNTIA:タイムワープの妙技 「幻覚の太陽」

CYNTIA:タイムワープの妙技 「幻覚の太陽」 - Raijin Rock
CYNTIA:タイムワープの妙技 「幻覚の太陽」
CYNTIAというバンドは、デビューアルバム『Endless World』(2012)収録の楽曲「幻覚の太陽」で、不可能であるはずのものを可能にしてのけた。 通常とは異なる構造の歌詞と完璧な器楽の間奏が特徴で、この9分の掻き回すようなロック曲は3分の珠玉のポップソングと化すのだ。これは、タイトルの意味に照らせば、どこか納得のいくものだろう。CYNTIAは、曲の冒頭にはまず印象派的なシンセサイザーのアルペジオを穏やかに用い、そこにドラムとギターのアクセントを加え、疾走感のあるグルーヴに変化させている。

ボーカルのメロディーは5つあり、それぞれどれも性格が異なる。その一部には、対位法的にバックボーカルが重ねられている。そのため、これらをAメロとサビに分類することには大して意味がない。先立つメロディーよりキャッチーなメロディーが次々と導入され、「I believe in the future world, the future world!」(未来の世界を信じている、未来の世界を!)という歌詞の最後の1行で最高潮に達する。この進行は2回繰り返され、KANOKOのドラムのダブルキックがリズムを前進させ、長い器楽間奏に至る。

間奏では、ギタリストYUIの噛み付くような突飛なソロが繰り広げられ、別の音世界からパラシュート落下して登場してきたかのようである。短くもエキサイティングなドラムの間奏を経て、最後の3つのボーカルパートが反復される。CYNTIAはその後、最初の疾走感のあるグルーヴに戻り、ハードストップで曲を閉じる。CYNTIAの「幻覚の太陽」は、始まったかと思えばもう終わってしまうような曲だ。素晴らしいサビとクレバーな構造的要素を組み合わせることで、タイムワープしたかのようにあっという間に過ぎる魅力的な作品が仕上がることの好例だ。固定観念を捻じ曲げてくれる曲である。

Written by

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です