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BRIDEAR: ハラハラドキドキ…予測不可能な 「Bloody Bride」のレビュー

BRIDEAR: ハラハラドキドキ…予測不可能な 「Bloody Bride」のレビュー - Raijin Rock
BRIDEAR: ハラハラドキドキ…予測不可能な 「Bloody Bride」のレビュー

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パワーメタルバンドのBRIDEAR(ブライディア)は、メタルロックの辛辣なまでの冷酷さと、卓越したポップ・ミュージックの美しさの間を長年にわたって行き来してきた。 ニューアルバム「Bloody Bride」では、ヴォーカルのKIMI、ベースのHaru、ドラマーのNATSUMI、ギタ-のMISAKIとAYUMIが、新しいアプローチで全く異質の世界へと導いてくれる。BRIDEARには、同じものが1つとして存在しない。 アルバムがリリースされるたびに、彼女たちは新しい領域を探っている。「Bloody Bride」は、世界で最も興味深いロックバンドの1つである彼女たちが、魅力溢れる進化を遂げている中で再び新境地に達したアルバムである。

「Bloody Bride」は、全体的なトーンとシーケンスの両方において、前のアルバムである「Expose Your Emotions」とは大きく異なっている。「Expose Your Emotions」では、BRIDEAR初となるアコースティックギターによるバラードなど、バラエティに富んだ曲が収録されていた。その多くは、苦悩と興奮を題材とした作品であるが、最後は、とびきりイカしたロックである「Sick」、「Crybaby」、「Again」の3曲で締めくくっている。

「1」

「Bloody Bride」は、ほぼ最初から最後までエネルギッシュな曲の連続だ。アルバムの終わりにかけて、1分あたりのビート数がわずかに減少しているものの、すべてのBRIDEARの曲の中で最も美しいメロディーの1つと言える、当アルバム最後の曲「Starlight」さえも、激しいオープニングテーマと歌詞を際立たせるMISAKIとAYUMIのお約束のギターコードが注目を集めている。

「Bloody Bride」は、不協和音をベースとする彼女たちの基本姿勢から決して離れすぎていない。BRIDEARの前作のアルバムと同様、「Bloody Bride」は、ハーモニーのテンションとリリースによって不協和音を緩和し、聞くたびに新しい素晴らしさが発見できる複雑で多様なテクスチャの作品となっている

「2」

また「Bloody Bride」では、BRIDEARが、「Rebirth」や「Wing of Hope」などのメロディを主体とするドラマチックなロック・アンセムから離れ、より曖昧あるいは難解で、もっと集中して聞く必要がある曲へと引き続き進化している。彼女たちの場合、多くの曲の始まりとなるテーマメロディー、すなわちジャズで言うところの「ヘッド」が同じままであることは、ほとんどなく、むしろ進化して、新しい形を成している。バース、サビ、ブリッジ、間奏、ソロは、多くの場合、予想外の方向に進展する。彼女たちの 曲には、リスナーの核となる要素が1つとして含まれていることは、まずないだろう。

「Bloody Bride」と「Boy」の曲を盛り上げる猛烈なリフは、Slipknotを彷彿とさせる。 BRIDEARは、「Bloody Bride」の曲の中の2つの全く異なる間奏のように、Slipknotよりも純粋な不協和音を多く活用している。 後半で繰り返されることになる最初の不協和音の間奏は、単に混沌としているだけなのだが、 2番目の不協和音の間奏は、完全に毒気づいていて、耳障りな子供の笑い声にかぶせてAYUMIとMISAKIが悪魔の不協和音を演奏している。だが、Slipknotとは違い、BRIDEARには、3人のパーカッショニストが、勢いを弱めることなく前進してゆく感覚を作り出す必要はない。 NATSUMIが一人でかなり上手くやっている。

「3」

90秒のエレクトロニカである「Deep Blue」でこのアルバムは始まる。この曲を聴いて、BRIDEARがシンセサイザーをベースとする新しいサウンドを採り入れたのだろうかと思う御仁もいるだろうが、 全くそうではない。「Bloody Bride」のアルバムの冒頭のように、何ヶ所かシンセサイザーが目立つ場面はあるものの、全般的に電子楽器は、後続の曲の中で洗練された脇役に徹している。

 

以前ミュージックビデオとしてリリースされた「Daybreak」は、「Deep Blue」に続き、その絶え間ないリズムでアルバムのトーンを決定づけている。 この曲の出だしの部分のコーラスである「Whoa-oh-ohs」は、不穏なムードを創り上げるために熾烈なまでくリフに依存する曲のコレクションの中では、外れ者的存在である。他の曲と同様、BRIDARの作品歴の中で、「Daybreak」は、バースやサビで様々な核となるトーンを使うというテクニックを効果的に利用し、リスナーを不安気なもやもやとした気持ちの状態にさせている。

「4」

またBRIDEARは、リズムの変化、ハーフテンポの部分、パーカッションのハードストップ、シンコペーションなどのリズミカルなテンションを使って、リスナーの心の奥深くに、落ち着きどころを求める不安気な気持ちを創り出している。「Dimensions」は、調和のとれたテンションとリズミカルなテンションの両方を巧みに操り、変化する感情の万華鏡を通してリスナーを導いている。

バースとサビの間の長調/短長の変調は、BRIDEARがよく使う戦略である。だが、この曲は、HARUのダイナミックなベースと、NATSUMIのドラムの複雑なリズムによって、この曲に内在する不確実性を操っている。

メジャーキーのサビの場面では、喜びが爆発し、これには世界共通、鳥肌ものだ。 KIMIは、シンセサイザーのスローペースで短い曲に続いて、ラップ付きの曲で盛り上げており、これは、これまでのBRIDEARの作品では前例のないことだ。ラップの後は、お約束のソロギターの叫びから、ツインギターによる演奏が全開となる。まさにリスナーが息を飲む瞬間だ。この瞬間、BRIDEARの曲を聴くことと、ロジャー・フェデラーのテニスを見ることは、同じくらい聴覚的に興奮する。 BRIDEAR偉大なミュージシャンだ。

「5」

「Fake World」は、このアルバムの目玉であり、感情的なクライマックスである。リスナーを引きつけるオープニングメロディーから始まるこの曲は、KIMIのオープニングバースの間、HARUのベースが中心となり、歯切れの良いパワーコードがアクセントとなっている。プレコーラスは、KIMIのメジャーキーとは対照的に、神経質で小刻みなギターのメロディーとなっている。そして次の瞬間、突然メジャーコードへと変わったギターコードが炸裂し、サビの部分となる。しかしながら、サビへと突入するこの部分でさえ、短いメロディによって遮られており、奥深い複雑さを呈している。

KIMIが2番目のバースを歌い始めると、チャグの最中のギターを除くすべての楽器の演奏が止まる。 2番目のサビに続くマルチパートのインスツルメンタル部分には、完全に意表をつかれる。 このセクションの冒頭部分は、Peripheryが演奏する「djent」の中のチャグのリズムを彷彿とさせる。それが最終的には、ゴージャスなツインギターセクションへとなり、短いながらもワイルドなギターソロがそれに続く。 バンドは神経質で小刻みにリズムを刻むプリコーラスへと戻り、サビを2回繰り返す。最後は、壮大な不協和音がフェイドアウトして終わる。「Fake World」は、多くのBRIDEARの曲を特徴付ける優れた編曲技術の一例と言える。

「6」

「Bloody Bride」には、BRIDEARが駆け出しの頃に演奏していたタイプのロック・アンセムが以前よりも少なくなっているかもしれない。にもかかわらず、リスナーを夢中にさせる「Ashes」の中の掛け合いのように、最高にホットな曲の中でさえも、美しいメロディーの瞬間がたくさんある。

プロダクションは、もちろん素晴らしい。ミキシングは、HARUのベースとNATSUMIのドラムの両方を強調しており、どちらもMISAKIとAYUMIのギターと同じレベルのリード・インスツルメントとして機能するようになっている。 HARUのベースは、「Fake World」、「Dream Eater」、「A Glorious World」など、特定のボーカルのセクションで優位に立っており、「Glitter」で、ちょっぴりファンクに浸っている。

またHARUは「Keshin」と「Boy」の過激なボーカルも担当しているらしい。Slipknotのビジョンを彷彿とさせるにもかかわらず、「Boy」にも1980年代のヘアメタルバンドを彷彿とさせるような、盛りだくさんのパワーコードを駆使した、リスナーを駆り立てるサビもある。いつもと同様、BRIDEARは驚きに満ちている。

「7」

NATSUMIは、非常にセンスの良いドラマーだ。 彼女は決してビートを見失うことはないが、彼女のフィル、ドラムロール、シンバルクラッシュ、ハーフタイムセクションが曲を活気づけている。「Bloody Bride」で最もバラードに近い曲である「Starlight」は、彼女が曲のさまざまなセクションを通してリスナーの関心の的をどのように向けているかを示す例の1つであると言える。

MISAKIとAYUMIは名ギタリストだ。彼女たちの歯切れの良いパワーコードや単音のフィギュアをテンションに加えたり、そして最終的にはそのテンションの緩和を促したりして、ボーカルの背後のバッキングトラックに変化をもたせている。 彼女たちのギターソロは短くなりがちであるものの、ワイルドで予測不可能でもある。 彼女たちの演奏での紆余曲折は、BRIDEARのすべての曲に織り込まれている複雑なタペストリーの重要な部分となっている。

「8」

KIMIは、封じ込められない衝動に完全に取り憑かれた女性の切羽詰まった状態で歌い続けている。 彼女はたいてい何かのために訴え、懇願しているように聞こえる。 彼女はあらゆる音楽のジャンルにおいて最もリスナーの心を引きつける歌手の一人だ。ミキシングは英語の歌詞を含む曲、特にやや絶望的だが希望に満ちている「Starlight」で彼女の英語力をはっきりと証明するのに十分である。問いかけるギターのフィギュアがリスナーの心に疑問を抱かせ、KIMIが「wondering if you’re thinking about me too(あなたも私のことを考えているのかしら)」と歌うのを聴く時、それよりも心が痛むものが他にあるのだろうか?

 

「Starlight」を初めて聴くと、執拗で、懲らしめているような曲の全体的なムードに合っていないように思われる。 それでも、この楽観的で臆することないロマンチックな曲は、時折AYUMIとMISAKIのギターリフと物悲しいギターのソロの不確実性によって強調され、常に驚きに満ちて素晴らしく、予想がつかないアルバムのエンディングにまさにぴったりである。 さらに、「Starlight」の最も興味深い点の1つは、ハッピーエンディングではなく、曖昧で不安感が残るようなトーンで曲が終わるということであり、このラブストーリーの行方を謎に包まれたままにしている。

「9」

予測不可能という言葉は、なぜBRIDEARが圧倒的に印象深いバンドであるのか説明するのに最も適した言葉かもしれない。 リスナーは次に何が起こるかわからない。「Dream Eater」のように、インスツルメンタル・セクションが、それ以前に起こったことと明確に関連していないことがよくある。 優雅なオープニングが、「A Glorious World」のように、複雑でありながらも美しいメロディのオープニングテーマとなるかもしれない。 あるいは、「Star light」のように、まるで聖歌のようなオープニングテーマがエレジーにかわるかもしれないのである。BRIDEARは、無作為のように思えるハードコアメタルリフのチェンジを、荘厳な美しさの中、驚くべき巧妙さで瞬時にやってのけているのである。

 

BRIDEARは、世界で最も優秀かつ独創的で興味深いロックバンドの1つだ。その素晴らしいアルバム「Bloody Bride」が、BRIDEARの作品歴に新たに仲間入りするわけだ。 「Bloody Bride」は、今年の最優秀アルバムの候補として絞り込まれている。芸術的なナイフの刃先は危険かもしれないが、息を飲むほどに美しくもなる。

 

読者の皆さんへのお知らせ:

「Bloody Bride」の海外版は5月7日にリリースされる。これには、以前アニメの「ケンガンアシュラ」のサウンドトラックアルバム「The Anthems」でリリースされた「The Moment」が含まれる。 iTunesの先行予約情報によると、奇妙なことに、「The Moment」は、海外版には含まれていない「Fake World」の代わりとして、「Ashes」と「Glitter」の間に挿入されているようだ。 なぜこんなことをするのだろうか? 本文にもあるように、「Fake World」は、「Bloody Bride」の肝となる曲なのだ。 というわけで、海外版を購入する場合には、必ず選択したデバイスやプレーヤーに「Fake World」を別途インストールする方法を見つけてください。

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