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BRIDEAR: Expose Your Emotions Album Review

BRIDEAR: Expose Your Emotions Album Review - Raijin Rock
BRIDEAR: Expose Your Emotions Album Review

Rebirth

2019年12月、BRIDEARがついに待望のセカンドアルバム、Expose Your Emotionsをリリースした。バンドの先行きに関して往年のファンは、何ヶ月もの時間を不安の裡に過ごしてきた。精密機械がパーツを3つ – 技巧派ギタリスト/ソングライターのMISAとMITSURU、ドラマーのKAI – も失ってどうして機能できるだろう。

Expose Your Emotionsはバンドがまだ、とんでもないハードロックなハイレベルで機能している事を苦もなく証明した。 MISAの後継としてバンドに入ったギターシンガーのMISAKIと、MITSURUの衣鉢を継いだAYUMIは、技術も作曲の腕も十分に備えており、新入ドラマーのNATSUMIの刻むビートにドラムキット上で十分に試され磨かれなかったものはない。旧来のベーシストHARUの演奏はあいも変わらず一流である。そして、KIMIは言を待たず、ロックを超えて、全ての音楽ジャンルの中でも最も人を惹き込むものをもったシンガーの一人である。

Expose Your Emotions

確かにバンドの前の作品との違いは認められる。楽曲は、KIMIのカリスマ性のあるヴォーカルを除いては、全く別のバンドだと言い得るほどに過去のリリースとは異なっている。これらの曲はメタルにおける伝統的なマイナーの旋法により堅固に根ざしており、従前の作品の特徴であった、マイナーの旋法の節からの燦然としたメジャーキーのコーラスへのシフトが欠けている。もっとパンチがあり直接的なのだ。新曲のどれも、『Wing of Hope』や『Rebirth』などの代表作の、そびえるような高みには届いていない。MISAKIとAYUMIの突飛なギタープレイは、技術的には素晴らしいものだが、MITSURUとMISAのセンセーショナルな表現に比べると華美さにかける。そう言う訳で、確かにBRIDEAR変わってしまったのだ。

にも関わらず、Expose Your Emotionsは大成功である。

Ghoul/Mirror/Dance Macabre/Awakers/Thawing

アルバム最初の『Ghoul』の冒頭のヘヴィーな3連符や、それに続くドライブのかかったギターによる主題が、バンドがしっかりとメタル界に根ざしている事を語る。それに続く速いペースのロック2曲、AYUMIの作曲になる『Mirror』とMISAKIの『Dance Macabre』が、猛烈な緊張感の張りつめた雰囲気を維持する。たとへ日本語が理解できなくても、リスナーは、これらの曲で、KIMIが熱望や胸の痛み、怖れにのみ込まれているという事を感じとるだろう。KIMIには、人間の魂を、時には矛盾して混迷を誘うようなその情熱のなかに捕えてしまう歌声という本当の才能がある。Expose Your Emotionとは、彼女の声を含むどんな作品には適当なタイトルだ。

『Awakers』(HARU作曲)はNATSUMIの手腕が発揮された冷徹なジャムで、悪魔の音程を使う事によって不気味な印象に仕上がっている。『thawing』(曲MISAKI、詩KIMI)は、BRIDEARの前作における、異端的にメジャーキーの曲『Dear Bride』に今アルバム中最も近いものである。しかし『thawing』は大衆に迎合した曲ではない。メロディーの複雑さ、歌詞における呼応は全く別世界のものと言って良いし、不調和的で風変わりな短いギターソロは単純に素晴らしいものだ。

misery machine/You

『misery machine』(MISAKI作詞作曲)アルバム前半における感情面での最高潮をなしている。楽曲の組み立てにおいての大傑作だろう。 焦がれるようなギターによって始める『misery machine』は、一種のバックビートジャムとしても演奏され始めるが、数分の後にはテンポが加速し、クランチの効いたギターリフが主役に踊り出し、ただただ美しい繋ぎへと移って行く。美しいギターソロを際立たせるブロークンスケールがどこまでも上昇して。『misery machine』はBRIDEARの楽曲の中でもその殿堂に属するものである。

『misery machine』に続く『You』(AYUMI作詞作曲)は、BRIDEARの中でも他に類をみない、Aメジャーキーのアコースティックバラードである。アコースティックギターのやりとりが特徴をなし、ソロ部分で3台目のアコースティックギターが加わる。間違いなく異質ではあるが、また、間違いなく魅力的でもある。

Sick/Crybaby/Again

『You』による小休憩を挟むと、リスナーは『rock ‘em, sock ‘em, knock ‘em out』に強襲され、『Sick(KIMI)』『Crybaby(MISAKI/KIMI)』『Again(KIMI)』が突風のごとく投げかけるパンチを叩き込まれる。この3曲によってExpose Your Emotionsは盛大に幕を閉じる。あなたはメタルミュージックのようにこう叫んでいるだろう。KIMIに、彼女が音楽へ与えるその比類ない情熱とドラマを表現する機会が与えられた、と。そしてメタルの叫びであるにも関わらず、これらの楽曲には、『Again』の繋ぎなどの、リスト的な豊かなロマン主義的な瞬間が含まれている。こういった変則を生み出せる能力こそ、今日では世界でも最高のロックミュージックが日本で作られているまた1つの理由であるのだ。

このレビューで、Expose Your Emotionsの楽曲が誰によって書かれたのかを表記しているのには理由がある。新メンバーのMISAKIとAYUMIを含め、4人のメンバーが様々な組み合わせで楽曲を書いた。にも関わらずアルバムとして一貫性があり、全体としてシームレスなのである。Expose Your Emotionsは殆ど合作だとも聴かれる。メンバーの交代を考えるとそれは驚異的な事である。

Wing Of Hope

ギタリストのAYUMIとMISAKIはソロのやりとりにおいて完璧に一致している。2人とも輝くような素晴らし演奏をして、楽曲を活気づける装飾的なリフやアルペジオ、細部においてシンプルであるという事に満足する事がなく、常に3連符や追装飾音符が興味を刺激するよう追加されている。HARUのベースは、ミックスである程度埋もれてしまう事もあるが、度々追加的な装飾として機能する。前メンバーでのBRIDEARでもそうであったように、これらの細部を発見するために注意深く聴くだけの価値がBRIDEARにはある。

BRIDEARほどにバンドメンバーの交代があった場合、将来を心配する傾向があるのは自然な事である。そういった心配は簡単に消え去るものではないが、溌剌として、騒々しくまたスリリングなExpose Your Emotionsからして、これら5人の女性がこれからも協力して素晴らしいメタルミュージックを作ってくれる事が願われるばかりだ。

公共サービスの案内

注意:BRIDEARはその他多数のバンドと同様に、コロナウイルスの影響により本年度のツアーを開催する事が叶わず、夏季にツアーが興隆する事から大変な打撃となりました。BRIDEARは、7月20日に行われるクラウドファンディングによって、7月26日に生放送をストリーミングする事を発表しました。BRIDEARのライブ関連の商品は少数となっておりますので、新しいBRIDEARのライブに参加するチャンスです。

このイニシアティブでKIMI、HARU、MISAKI、AYUMIそしてNATSUMIを応援してください!

クラウドファンディングについてもっと知りたい場合は下記のページへ:

https://bridear.jp/news/post-669/

クラウドファンディングイニシアティブを支援するには下記のページへ:

https://camp-fire.jp/projects/view/300264

 

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